2020
10
08
「民法改正~預貯金の払戻し~」

10月に入り、札幌の秋も一段と深まり、朝晩は寒さを感じる季節となりました。

今年は、新型コロナウイルス感染症に伴い、外出・移動を控えなければならないという未曾有の危機に直面し、改めて家族との関わり合いの大切さを感じた方もおられるのではないでしょうか。

さて、今までこのブログでは、民法改正について、配偶者居住権(2020.6.6掲載)消滅時効(2020.4.3掲載)自筆証書遺言(2019.9.5掲載)などを取り上げていますが、今回は相続のうち、故人の預貯金の払戻しのお話しをしたいと思います。

仮に、家族の大黒柱であるAが亡くなられた場合、改正前までは残された相続人である配偶者B、子どものCとDは、A名義の預貯金を単独で引き出したり、その預貯金に自由に入金したりすることができませんでした。本来、故人名義の預貯金は、相続財産となりますので、相続人間での話し合い(遺産分割協議)を経なければ、各相続人の相続分は確定せず、確定までは、相続財産の散逸を防ぐために、金融機関が預貯金口座を凍結しているからです。

しかし、Aのお葬式や、Bが普段Aの預貯金を頼りに生活していた場合、急いでお金を用意しなければなりませんよね。

今回の民法改正により、令和元年7月1日以降の引き出しにおいては、相続人の法定相続分の3分の1までの金額、ただし上限150万円(民法第九百九条の二に規定する法務省令で定める額を定める省令)を、相続人が単独で払い戻しできるようになりました(民法909条の2、民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律附則5条1項)。

Aの場合、A名義の預貯金が600万円あれば、配偶者Bは、その6分の1(法定相続分2分の1×3分の1)にあたる100万円、子どもであるCとDは、それぞれ12分の1(法定相続分4分の1×3分の1)にあたる50万円までであれば、単独で払戻しができることになります。これにより、相続人間でのトラブルを回避しつつ、故人のために円滑にお金を用意することができますね。

お互いを思うがゆえにトラブルに発展しやすい相続問題も、弁護士に相談すれば道が開けることもあるかと思います。是非お気軽にご相談下さい。

                                       弁護士 富所恵未