2020
08
06
コロナと解雇

2020年に入ってから世界中で新型コロナウイルス(COVID-19)が急速に感染拡大し、日本においても緊急事態宣言が出され、宣言の解除後も、再び感染者数の増加が連日報道されています。感染予防のため、密閉、密集、密接という「3密」の回避や、さまざまな「新しい生活様式」が推奨されるなど、私たちの日常生活は大きく変化しつつありますが、いまだに収束の目処が立っていないことにより様々な影響が生じています。

例えば、新型コロナウイルス感染症の影響で業績が悪化したとして、会社に解雇されてしまったという話を聞きます。

しかし、新型コロナウイルス感染症の影響を理由として、無条件に、会社が従業員を整理解雇することはできません。

整理解雇が有効になるかどうかは、⑴人員削減の必要性があったかどうか、⑵解雇を回避するための努力義務が尽くされたかどうか、⑶解雇対象者を選定した基準が合理的であったかどうか、⑷説明や協議が行われるなど解雇の手続が妥当だったかどうか、という4つの基準に従って判断され、新型コロナウイルス感染症の影響がある場合も例外ではありません。

有期労働契約者(雇用期間の定めのある場合)についても、整理解雇は、同様に上記4基準に従う必要がありますし、労働契約法17条1項により会社は「やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない」とされていますので、無期労働契約者(雇用期間の定めのない場合)よりも厳格に判断されます。

また、新型コロナウイルス感染症の影響による業績悪化を理由として、採用内定を取り消されたという話も聞きますが、採用内定取消が、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合には、権利を濫用したものとして無効となります(労働契約法16条参照)。

そのため、新型コロナウイルス感染症の影響によって客観的に業績悪化が認められるような場合には、採用内定取消が有効とされる余地が大きくなってしまうかもしれません。

もっとも、採用内定取消も整理解雇の上記4基準に従う必要がありますので、濫用的な採用内定取消が許されないことは言うまでもありません。

このように、新型コロナウイルス感染症の影響によって身近に起こり得る法律問題として、解雇に関連する例を挙げましたが、会社の側も収益が少なくなって「コロナ倒産」が増えているとか、家庭内でも在宅時間が長くなって「コロナ離婚」が増えているといった報道にも接します。

いずれにしましても、お困りごとがありましたら、おひとりで悩まず、お気軽に弁護士へお問い合わせいただくことをお勧めいたします。

なお、各種支援についての情報が掲載された厚生労働省、首相官邸のウェブサイトへのリンクを張っておきますので、適宜、ご参照ください。

 

厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html#hatarakukata(外部サイト)

https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000622924.pdf(外部サイト)

首相官邸
https://www.kantei.go.jp/jp/pages/coronavirus_index.html(外部サイト)

 

弁護士 伊藤昌一