2021
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21
法律用語小話 -本日のメインは、カンネンテキキョウゴウ!?-

法律を学ぶようになって、15年、すっかり法律用語に馴染んでしまいましたが、皆様からのご相談を受けた際、法律用語や法律概念を日常用語に置き換えて説明することも弁護士にとっては必要なスキルであるといつも感じています。

法律用語には、様々なものがありますが、日常用語と似ていて、区別がつきにくいものや、聞くだけでは何を意味するのか想像がつかないものもあります。

例えば、漢字は同じですが、読み方が異なる場合に、「遺言」があります。

「遺言」を読者の皆様は、何と発音しますか。

「ユイゴン」と発音される方も多いのではないでしょうか。日常において、死に際に残す

言葉である遺言を「ユイゴン」と発音することは、よくあります。しかし、法律用語としての「遺言」は、「イゴン」と発音され、その意味は、死後の財産や身分に関する一定の方式に従った単独の意思(イシ)表示(ヒョウジ)で、死亡によって効力を生ずるものを指します。

「遺言能力」は「イゴンノウリョク」、「遺言執行者」は「イゴンシッコウシャ」と、このような具合に発音します。

次に、「イシヒョウジ」ですが、法律用語では「意思」表示と書き、「意志」表示とは書きません。意思表示は、民法に何度も記載されているほど、法律を理解するために必要不可欠なワードですが、法律を学び始めた頃は、法律の試験で意志表示と記載してしまうことも珍しくないと思います。

最後は「カンネンテキキョウゴウ」です。

こちらは、前例と異なり、日常では発言の機会がほとんどない、法律用語です。

私が、初めて、「カンネンテキキョウゴウ」という言葉を知ったのは、法律の書物を読んだときでしたので、おおよそそれが法律用語だと理解できましたが、初めてこの言葉を聞いたら、シチュエーションによっては、外国語とも、新しい会社の名前とも、アニメの主人公とも、はたまた、料理名とも思えてしまうのではないでしょうか。

漢字では「観念的競合」と表記されます。刑罰の適用の際に使う用語で、刑法54条1項前段に規定があり、一個の行為が同時に数個の罪名に触れる場合に、その最も重い刑に処断することを指します。例えば、Aが免許証を所持せずに、呼気1リットル中にアルコール濃度0.25ミリグラム以上の飲酒運転をした場合、この行為は、免許不携帯罪(道路交通法95条1項、121条第1項10号)と酒気帯び運転罪(同法65条1項、117条の2第1項1号)の両方に触れますが、より重い法定刑を定めている酒気帯び運転罪(5年以下の懲役又は100万円以下の罰金)の範囲内で裁判所が、Aに言い渡す刑を決めることになります。

このように私たちの生活には、法律や法律用語が溢れています。それにも関わらず、何か問題が発生したときに、法律を身近に感じられないのは、言葉が専門的だからかもしれません。

しかし、そのような時には、日常生活と法律の架け橋である弁護士に相談してみてください。きっと問題解決のお役に立てるはずです。

新年も、皆様が抱える様々な問題を、身近な法律を通じて解決するお手伝いができれば幸いです。

当事務所は、本年12月28日をもちまして本年度の業務を終了し、新年は、1月5日より営業開始予定です。

新年も、どうぞ宜しくお願いいたします。

弁護士 富所恵未