2019
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離婚の「い・ろ・は」

 今年も早いものであと二ヶ月を切りました。年号が令和となったり、東京オリンピックのマラソン会場が札幌となったり、今年もたくさんの出来事がありました。
出来事といえば、家庭の出来事として、心機一転、離婚や内縁関係の解消というご決断をされた方もおられるかと存じます。
離婚は決めたけれど離婚届を出すだけでよいのかという趣旨のご相談をよく受けます。
そこで、今回は離婚の際に、覚えておきたい「離婚のい・ろ・は」を考えていきたいと思います。
まず、い・ろ・はの「い」は、「いるものと譲れるものを分けること。」です。
お金の話(財産分与、慰謝料)、お子さんの話(親権者、養育費、面会交流)、老後の話(年金分割)など、離婚に際して話し合っておきたい付随的事項は様々です。
全てを得られるのであれば、それに越したことはありませんが、相手がいることですので、そうもいかないのが現状です。
そこで、まず、ご自身の今後の生活において、必要不可欠なものと、譲れるものの優先順位を付けてみるのはいかがでしょうか。
優先順位が分かれば、ご自身の頭の整理にもなりますし、夫婦でお互いに折り合える部分が出てくるかもしれません。
次に、い・ろ・はの「ろ」は、「ローン(借金)も気にかけること。」です。
どうしても注目してしまうのがプラスの財産ですが、マイナスの財産であるローンや借金なども財産分与の対象です。住宅ローン、自動車ローン、教育ローン、借入金、これらを家族のためにした場合、名義人でなくとも、マイナスを負担すべき場合があります。これらをどのように負担するかの話し合いも避けては通れない事項なのではないでしょうか。
最後に、い・ろ・はの「は」は、「話合いが先、その後に離婚をすること。」です。
離婚を急ぐ必要がある場合、離婚に付随した事項についてお互いに争いがない場合などには、離婚を先行させることも十分に考えられます。
しかし、離婚をするということは、時効(除斥期間)のカウントダウンを始めることにもなります。例えば、財産分与は離婚時から二年で除斥期間、離婚に伴う慰謝料請求は離婚から三年で時効、年金分割は離婚日の翌日から二年以内に請求しなければなりません。
お互いに納得していない状態で離婚届を出して、時効(除斥期間)のカウントダウンを始めるよりは、いったん別居生活を始めて、少し距離を置きながら話し合いを進めてみるのも一つの手なのではないでしょうか。
離婚をするか悩んでいる方は勿論、離婚は決めたけれどその後どうすればよいかわからないという方、離婚に伴う決め事に不足がないか心配な方は、「い・ろ・は」を念頭に、検討していただければ幸いです。

弁護士 富所恵未