2020
01
06
離婚後の養育費の確保

離婚された方や離婚を考えている方は、生活費はどのように確保しているでしょうか。多くの方は、ご自身の給料や年金でまかなっていると思います。ただ、配偶者と離婚して収入が減っただけでなく,お子様をも養育しているという方もいらっしゃいます。収入が減ったのですから,なかなか生活が苦しいといった場合もあります。離婚することになったら、前回のコラムでも指摘したとおり、いろいろと準備をしておく必要があります。今回のコラムでは、離婚後のお子様のための養育費の確保についてお話しします。
例えば離婚に際して養育費の支払いを取り決めたはいいですが、しばらくしてその支払いがなされなくなったということも往々にしてあります。その場合に備えて,きちんと準備をする必要があります。考えられる養育費の支払い確保には、次の方法が考えられます。
① 養育費の支払いについて公正証書を作成する
② 養育費の支払いを求める調停を家庭裁判所に起こす
①の方法ですが,離婚の前でも後でも,離婚の当事者が承諾すれば作成することは可能です。そして,公正証書に「本契約による金銭債務を履行しないときは,直ちに強制執行に服する旨陳述した」などという文言が記載されると(強制執行認諾文言といいます。),養育費の支払いが遅れた場合,すぐに裁判所に給料等の差し押さえをすることができます。このような効果は,強制執行認諾文言のついた公正証書にしかありません。たとえ弁護士が,当事者同士の養育費の取り決めについての書面を作っても,すぐに給料等を差し押さえることはできないのです。この点は公正証書のメリットといえます。ただし,当事者双方が合意しないと作成できないというデメリットもあります。
②の方法は,お子様が未熟で親の養育が必要な状態であれば起こすことができます。ちなみに,調停というのは,裁判所を間に入れて行う話し合いです。そして,養育費の支払いを求める調停を起こすと,たとえ調停手続で養育費についての合意ができなかったとして,裁判所が一定の判断を提示してくれます。例えば,「夫は,妻に対し,毎月3万円を支払え」というものです(これを「審判」といいます。)。この裁判所から示された審判あるいは調停手続の中で成立した合意は,先ほどの公正証書と同じく相手方の給料等を差し押さえることができます。これは調停のメリットといえます。ただし,調停は往々にして長引くことが予想されますので,その意味ではデメリットといえましょう。
いずれにしても,離婚に際しては,長い離婚後の生活のためにも,養育費をきちんと確保しておくことが必要でしょう。

佐々木将司