2023
12
25
サンタクロースも楽でない!?

今年もクリスマスの時期がやって来ました。
サンタクロースは、フィンランドのラップランド東部にあるコルヴァトゥントゥリという所から、空飛ぶトナカイのソリに乗って、世界中の子どもにプレゼントを運んで来てくれますが、日本にやって来る時には様々な法規制をクリアする必要があるようです。

まず、日本に入国する際には、出入国管理及び難民認定法(入管法)第6条第2項により、入国審査官に対し上陸の申請をして、上陸のための審査を受けなければなりません。
これを怠れば、入管法第5章の規定に従って、退去強制の手続が執られるとともに、入管法第70条第1項第2号により、3年以下の懲役若しくは禁錮若しくは300万円以下の罰金に処され、又はその懲役若しくは禁錮及び罰金を併科される可能性があります。

そして、ソリが「人が乗って航空の用に供することができる飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船その他政令で定める機器」すなわち「航空機」であると解釈できるとすれば(航空法第2条第1項)、日本国内においてソリで空を飛ぶためには、航空法第97条第1項または第2項により、国土交通大臣に飛行計画を通報しなければなりません。
これを怠れば、航空法第154条第1項第9の2号により、50万円以下の罰金に処される可能性があります。

こうして適法に、日本への入国を果たし、空から降り立つことができたとしても、子どもが待つ各家庭へ向かうためにソリで公道を走行しようとする際には、ソリは軽車両に該当するため(道路交通法第2条第1項第11号イ)、道路交通法において定められた各種規制に従わなければなりません。
例えば、夜間においては、前照灯、車幅灯、尾灯その他の灯火をつけなければならず(道路交通法第52条第1項)、これに違反すれば、5万円の罰金に処せられる可能性があります(道路交通法第120条第1項第5号)。
サンタクロースは、トナカイに「暗い夜道は ぴかぴかの おまえの鼻が 役に立つのさ」と語りかけますが、夜間に公道を走行する場合には、トナカイの鼻だけを頼りにしていると検挙される可能性があるのです。

さて、大変な苦労をして、いよいよ子どもが待つ家の前にやって来たサンタクロースですが、プレゼントを届けるためであっても、勝手に家に入れば、住居侵入罪に問われ、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処せられる可能性があります(刑法130条前段)。
その場合、サンタクロースとしては、プレゼントを届けてもらうためには、家の人はサンタクロースが家に入ることも黙示的に承諾していたとか、承諾が推定できるといった理屈で、無罪を争うことが考えられますが、そのような紛争に巻き込まれないためには、家に入る前に家の人に許可をもらっておくのが無難でしょう。
なお、サンタクロースが子どもの枕元にプレゼントを置いていく行為は、「当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し」たものとして、贈与の意思表示であると考えられますので、翌朝に目覚めた子どもが「受諾をすることによって」、初めて贈与契約を効力が生じることとなります(民法第549条)。

このような法律の小難しい話をすると、サンタクロースも辟易してしまうかもしれませんが、1年に1回しかない行事ですし、真夜中、大きな袋を担いで煙突から入っていくサンタクロースがいても、おおらかな気持ちで見守ることにしましょう。
メリークリスマス!!

弁護士 伊藤昌一