運行供用者性が問題となった事例
Iさんは、青色信号に従い交差点に進入したところ、交差点に右側から進入してきた加害車両に衝突され、右大腿骨骨折等、全治6ヶ月の重傷を負いました。しかし、加害者は任意保険に加入していませんでした。そこで、Iさんは、今後の対応を相談しに当事務所に相談に来られました。なお、本件事故は、加害者がZ社へ出勤する途中に起こしたものでした。
当事務所では、本件事故が加害者の出勤途中に起こったものであり、Z社に運行支配・利益が認められることなどを理由に、Z社に対して、損害賠償の支払を求めましたが、Z社は応じませんでした。
そこで、加害者及びZ社に対して、連帯して約400万円の損害賠償を求める訴訟を提起しました。裁判では、Z社が「自己のために自動車を運行の用に供する者」(自賠法3条1項)に当たるか、本件事故は加害者が「その事業の執行」(民法715条)について起こしたものといえるかが争点となりました。
裁判所は、加害車両がZ社の業務に使用されていなかったことなどから、Z社が加害車両の運行を事実上支配・管理することができたとは認めがたいとして、Z社の運行供用者性を否定し、J社に対する請求を棄却しました。しかし、当事務所が控訴したところ、控訴審では、和解勧試があり、Z社がIさんに約350万円を支払う内容で和解を成立させることができました。