2017
04
01
弁護士よもやま話・第1話 ~小さな事件の解決方法・・・弁護士を上手に活用する~

札幌で弁護士を開業してから30年以上が過ぎました。弁護士会の役職も一通り終え、時間に多少ゆとりができましたので、日常業務の傍ら「弁護士よもやま話」を執筆したいと思います。

栄えある第一話のテーマは、小さな事件(※1)における弁護士の活用方法です。

小さな事件を弁護士(法律事務所)に依頼するには、大きなハードルがあると思います。

なぜなら、経済的に見合わない、うまく行かなければ弁護士費用が持ち出しになってしまう、などの理由で依頼を諦めてしまう市民の皆さんが多いからです。

ただ、ここは思案のしどころ。

事件依頼を諦めてしまう前に、あるいは事件依頼する際に、合理的に弁護士を活用する道があるのです。

まず、法律相談を繰り返し受けながら、自分で解決を図ってみるという方法は、いかがでしょうか。

当法律事務所では、初回の法律相談を無料で行っており(※2)、また、法テラス(※3)の相談援助を利用できれば同じ内容の法律相談を3回まで無料で受けることができます。法律相談を継続し、適宜、弁護士のアドバイスを受けながら、そのアドバイスに沿って自分自身で事件の解決を図ってみることは、一考の価値があるでしょう。場合によっては、法律相談を続ける中で、相談している弁護士に契約書や通知などの作成をお願いしても良いかもしれません。継続して法律相談を行っているので、その弁護士は事件の内容を理解していますし、弁護士名を出さない書類の作成であれば大した弁護士費用はかからないと思います。

当法律事務所でも、法律相談を7回受け続けながらご自身の離婚問題を解決された方がいらっしゃいました。離婚問題は、必ずしも小さな事件とは言えないのかもしれませんが、投下した資金は5000円×6回の法律相談料3万円だけでした。ご本人にとっては必ずしも満足の行く結果ではなかったようでしたが、弁護士に依頼しても同じような結論に落ち着いた可能性もありましたので、合理的に弁護士を活用することができた、という評価になりましょうか。

次に、弁護士に相談しながらも、自分ではうまく解決できない場合には、どのようにすべきでしょうか。

当法律事務所で最近、事件依頼を受けた事案で、年配の有職女性が骨折したことにまつわる損害賠償請求事件がありました。この方も、数回、私の法律相談を受けながらご自身で示談を進めていましたが、相手方から満足の行く回答を得ることができなかったため、結局、私が事件の依頼をお受けすることになりました。費用が持ち出しになっても良いとまでおっしゃるので、着手金の半分を成功した場合の報酬に上乗せすること、和解の諾否は弁護士である私の判断にお任せいただく、という条件でお引き受けしました。

民事調停手続(※4)を利用することにしましたが、それまでの提示額を上回る内容で、すみやかに和解することができました。運が良かったのかもしれませんが、予想を超える結果に、依頼者は大いに満足されたご様子でした。

また、保険の活用も是非考えてみるべきでしょう。

ご自身が契約する損害賠償保険に弁護士費用特約が付いているかどうか、確認されたことはおありでしょうか。

最近は、自動車保険には弁護士費用特約が付けられていることが多くなってきましたし、自動車保険以外でも弁護士費用特約が付けられている保険商品が発売されるようになってきました。弁護士費用特約付保険に加入していれば、一定限度ではありますが、弁護士費用が保険で賄われます。この場合は、即座に弁護士に事件依頼すれば良いのです。

それでは最後に、小額事件で考慮すべきポイントをまとめてみましょう。

1 ご自身が契約する損害賠償保険に弁護士費用特約が付いているかどうか、確認してみる。

特約が付いていれば、迷わず弁護士に事件依頼しましょう。

2 継続して弁護士に法律相談をしながら、まずは、そのアドバイスにしたがって自分で解決を図ってみる。

ただ、自分自身で解決を図ろうという場合、問題がシビアであればあるほど難しいかもしれません。

3 継続して相談を受けている弁護士に、必要に応じて、契約書や通知などの書類の作成を依頼してみる。

専門家が作成した契約書であれば、効き目を期待することができますし、弁護士名を出さない通知であれば、費用もそれほど高くないと思われます。

4 弁護士に作成してもらった書類を送ってみても問題解決しない場合には、思い切って弁護士に事件依頼してみる。

弁護士に依頼する際、交渉だけを依頼する、調停手続までを依頼する(つまり裁判までは契約しない)、裁判を依頼する、というように依頼する手続きの限度をはっきりさせておいた方が安価で済む可能性があります。

また、成功報酬金を高めに設定するかわりに着手金を低くしてもらったり、着手金の一部を報酬に上乗せして清算するなど、弁護士費用について納得いくまで十分に協議しておくことが必要でしょう。

このように、小額事件でも弁護士を上手に活用して満足の行く解決を図れる場合があります。

まずは、無料の法律相談を受けられることをお勧めします。

(※1)ここでは、経済規模が100万円以下の紛争、小額事件と定義することにします。

(※2)法律相談は30分、5000円というのが普通ですが、さしたる根拠があるわけではありません。近時、札幌でも、法律相談を無料で行う事務所が増えています。

(※3)法務省所管の公的法人「日本司法支援センター」の通称名。経済的に余裕のない方が法的トラブルにあったときに、無料法律相談を実施したり必要に応じて弁護士費用などの立替えてくれます。札幌にも法テラスの地方事務所があります。

(※4)簡易裁判所で行われる、裁判官らが中に入って話し合いで事件・紛争の解決を図る手続。詳しくは最高裁のHP等をご参照ください。

弁護士 長田正寛